東白川茶は岐阜県の山中、加茂郡「東白川村」という茶産地としては北限の厳しい里山の環境で育まれたお茶です。

収穫も例年5月10日~30日と最も遅く、新茶の訪れが遅い地域ですが、その分ゆっくりと旨みを蓄えながら山の風味豊かな味と香りを育みます。

新茶前線の最終到達地点にあります

春の訪れとともに桜前線の後を追い、鹿児島からスタートして北上してくる新茶前線。
東白川茶の産地はその最も北にある産地です。

【新茶前線の北上の順序】

4月13日頃鹿児島県志布志茶
4月15日頃福岡県八女茶
4月16日頃三重県伊勢茶
4月23日頃静岡県静岡茶
5月1日頃京都府宇治茶
5月10日~岐阜県東白川茶

土地と栽培

温暖で広大かつ肥沃な土地を生かして栽培される静岡茶に対し、寒くやせた土地の山の急斜面等を利用して栽培されるのが東白川茶です。

急斜面の利用は冷気の滞留を避けるためと日照時間の確保という昔からの知恵なのです。

静岡茶と東白川茶の飲み比べ

東白川茶の特徴をわかりやすくするため、静岡茶の高級種と東白川茶の同レベルの種類を全く同じ条件で比較してみることにしました。

茶葉の品種はどちらも同じ「やぶきた」。茶葉自体の色は東白川茶の方が深い緑色をしており、手触りも若干固めで、
製造工程で茶葉が細かくなりにくい感じです。
静岡茶は明るい緑で、茶葉の微粉末がたくさん含まれています。

静岡茶と比べると、東白川茶は茶葉の蒸し時間がとても短くなっています。
かといって、静岡茶を東白川茶と同じ蒸し方をしても東白川茶の甘みは出ません。
これは、東白川の恵みがもたらした結果といえるでしょう。

次は、それぞれの茶葉を実際に淹れてみます。

水色に関しては茶葉とは逆で、静岡茶の方が深い色をしています。
これは、先ほどの茶葉の微粉末がたくさん溶け込んでいるためです。

一方、東白川茶の方は微粉末成分が少ない分、静岡茶より薄い色をしています。
写真で茶碗の底の見え具合をお確かめください。

使用している品種は同じ「やぶきた」ですが、
産地や栽培などの環境が違うだけでこれだけの違いが出るのです。

東白川茶は右の写真のように、
茶葉の段階から黄と緑の中間色のような色合いをしています。

さて、いよいよ飲み比べです。

味わいの違い

色自体が表すように、味の濃さは静岡茶に軍配が上がるかもしれません。
茶葉の微粉末状のものが口の中で素早く広がって、茶葉自体の濃厚さを強調するように働きます。
味はとても濃く、すばやく渋みがやってくる感じです。

一方、東白川茶は香りが楽しめるお茶。口の中に長く含んで飲んでいただくのが良いようです。
長く含んでいると、ずっと唾液が出ている感じで、長時間味と香りが口の中に残ります。
日本で最も新茶の訪れが遅い地域で、ゆっくり山の霊気を吸い込んで育つ東白川茶の大きな特徴と言えるでしょう。